
さよならOHV2バルブ!
OHVエンジンとは、吸排気バルブをシリンダー上部に配置し、以前のサイドバルブエンジンに比べ、充填&排気効率を高めたエンジンのこと。吸排気バルブを開閉するカムはクランクケース(エンジン下部)に配置し、そこからプッシュロッドと呼ばれる棒状パーツを介して作動させた。かつてはミニクーパーのほか、多くのアメ車がOHVエンジンを採用していた。

文・河野正士 写真・向後一宏 text / KOHNO Tadashi photos / KOHGO Kazuhiro
エンジンがフレームを兼ねたり、またエンジンの出力特性をダイレクトにカラダに感じるオートバイにとって、エンジン形式の違いはオートバイそのものの違いと言っても良いくらいだ。だからエンジン形式や気筒数、果ては傾斜角や吸気方法に注目してオートバイに乗るとその違いが明確で、実に面白いのである。
そこで今もっともエンジンに注目して乗りたいのがモトグッツィ・ノルジェ1200GT。09年モデルから、1000㏄を超えるモトグッツィモデルは“オットーバルボーレ”と呼ばれるOHC4バルブの新型エンジンが搭載されるため、伝統的なOHVエンジンを搭載する最後のモデルとなるからだ。
その要因の一つは、クランクと直結した、フライホイールと呼ばれる重石の慣性トルクによって得られる独特の加速感にある。たとえるならブランコ。徐々に振り幅が大きくなり、その下降時に感じるゾクゾクする加速感に近い。そしてもう一つは“間”だ。大排気量OHVエンジンは構成パーツが大きく、結果伝動時のロスも大きい。そこでのロスが、人間の感性に合っているのだ。これは効率を高めたOHCやDOHCエンジンでは感じることができない。ノルジェは、その“間”を感じられる数少ないオートバイなのである。
ノルジェとは、イタリア語でノルウェーを意味する。かつてモトグッツィの開発陣は、ニューモデルの耐久テストためイタリア・マンデロから走り始め、6400km彼方のノルウェーまで辿り着いたのだという。
その名が冠せられたこのノルジェも、長距離走行をこなすためのディテールが与えられている。もちろんそこには、OHVエンジンの人間くさい特性も大きく関係しているのだ。
BREVA750
1970年代から続く、OHVスモールブロックエンジンの歴史を受け継ぐ。軽快なエンジンと車体が特徴。人気のV7クラシックは、このブレヴァと同じプラットフォームを持つ
BREVA1100
1200スポルトやノルジェという、近代モトグッツィの礎となった新設計エンジンとフレーム、そして片持ちスイングアーム搭載。モトグッツィのイメージを変えたモデルである
CALIFORNIA VINTAGE
OHVエンジンに加え、フレーム形式や5速ミッションなど、モトグッツィのVツイン創世記に採用されたメカニズムをそのまま受け継いできたモデル。その見た目以上によく走る
GRISO1100
19世紀イタリアの小説に登場する逞しいボディガードから命名されたグリーゾ。それを表現するマッスルなスタイリングとロー&ロングな車体が特徴。フレームはオリジナルだ
1200SPORT
ブレヴァ1100のエンジンと車体をベースにビキニカウルを装着。また排気量拡大とロー&ワイドなハンドルの装着によって車体のバランスを絶妙に整え、スポーティな仕上がりに