文・松井 勉 写真・向後一宏 text / MATSUI Tsutomu photos / KOHGO Kazuhiro
創業56年を迎えたKTMは、今年走りのスパイスを利かせた「R」ファミリィを誕生させた。ここに紹介する990スーパーモトRはその中 でもマルチに楽しめる一台である。
細身のシートに跨り走り出すと、減衰圧の強い足回りが硬い乗り味を示す。しかしこと旋回となると、交差点レベルから車重を意識させない身軽さを見せる。峠を流す程度では手持ち無沙汰になるほど曲がるのが簡単なのだ。嬉しいのはスーパーモト系にありがちな切れ込み感もない。
ならば、とフルサイズのサーキットに踏み込んでみた。Vツインエンジンは市街地や峠同様、実にフラットなトルク特性で開けやすく、それでいて刺激的な加速を楽しめる。READY TO RACEなんて熱血スローガンなKTMだが、安心感に満ちた境地で右手の操作を出来てこそ、速く走れる。そのことをよく承知している彼ららしい味付けだ。
街中ではやや高めに感じたシートも、サーキットでは軽い前傾姿勢をとるのに役立ち、タイトターンから高速コーナーまで一体感のあるハンドリングを楽しめた。走りに夢中になれるタイプなのである。
ヨーロッパではBMWに次ぐ生産台数を持つKTM。走りとライフスタイルの融合性という点に加え、国内ブレーク前夜の話題性という面でも、買いである。これらを含め、僕が推す理由は少なくないのである。
SPECIFICATIONS
(ケー・ティー・エム 990スーパーモトR)
TRANSMISSION:6-SPEED
LENGTH:2177mm
WIDTH:789mm
HEIGHT:1236mm
WEIGHT:189kg
WHEELBASE:1505±15mm
SEAT HEIGHT:875mm
ENGINE:V2 DOHC
DISPLACEMENT:999cc
POWER:116ps/9000rpm
TORQUE:97Nm/7000rpm
TIRES:F:120/70ZR17 R:180/55ZR17
PRICE:1,785,000yen