芸人の中でもかなりのクルマ好きとして知られる、デンジャラスのノッチさん。所属事務所のHPでロータリーエンジンマニアを宣言し、プライベートではサーキットまでマシンのエンジン音を収録しに行くほど。しかもちょっとした整備なら自分で行えるほどの腕前という話だ。
「子供のころ、友達の親父が整備士でね。あちこち連れて行かれて、走っているクルマの名前を当てさせられたんです。あとは昭和の名車についての講義もありました。クルマ好きになるための英才教育を受けた感じですね(笑)」 初めての愛車は26歳で手に入れたサニートラック。ちょうどピックアップトラックの西海岸風ドレスアップが流行していた、90年代初頭の話。 「サニトラってメチャメチャ渋い選択でしょう。どうしても欲しくて、農家のおじさんから直接譲ってもらったんですよ。サニトラは平気で20km/ℓ 以上走るから、若手芸人の財布にやさしい! 荷台に竿とクーラーボックスをボンと放り込んで、よく三浦のほうまで釣りに行っていました」
サニトラの次からはエンジン好きのノッチさんらしく、スポーツカーに傾倒していく。まず選んだのは240Z。さらにRX-7(FD)をチョイス。 「Zを選んだのは、L型エンジンを味わいたかったからです。キャブはソレックスの44φを付けて。フォワフォワーっていう、なんともいえない音がするんですよ。L型と同じくらい憧れていたロータリーエンジン搭載のFDには5年くらい乗りました。13Bエンジンは2サイクルみたいに回るから面白い。ターボが利いてきたときの、ギュウウウウンっていう心地よい音がたまらなく好きでしたね」
現在の愛車であるミニ・メイフェアは4年前に購入した。エンジンを軸にしたクルマ選びとは異なり、ノッチさんのノスタルジックな思いが詰まったチョイス。1959年にデビューしたミニは、クルマに興味をもって以来いつも視界に入ってきたクルマ。整備士のおじさんに連れまわされていたときも、自分でクルマをいじるようになってからも、ほぼ変わらぬ姿で街をトコトコと走っている。その愛らしい姿を眺め続けているうちに、自分でも乗ってみたいと思うようになった。 「ミニはまるでゴーカートのようですね。80km/hで走っていても、体感速度は倍くらいあるんじゃないかな。FDとは違った意味でスリリングなクルマです。取り回しがいいから仕事でも重宝しますよ。ロケ先の狭い道にある駐車場にも苦労なく入りますからね。反対に車高が低すぎてテレビ局などの立体駐車場に入れられない。仕方なく入口近くの平置きスペースに止めさせてもらっています。ちょっとしたVIP気分ですね(笑)」
最近ではバラク・オバマ次期アメリカ大統領のものまねが大好評(なんと本人公認の芸なのだ)。どうせならクルマもアメ車にして、公私ともどもVIP気分を堪能しては……? 「実はアストロやダッジのSUVに乗りたいなって思っているんですよ。嫁にクルマを買い替えたいと話したら『ふざけるな!!』と枕が飛んできました(笑)。アメ車に替えても運転するのは僕ですからVIPにはほど遠いし、しばらくはミニに乗り続けます。乗り心地がいいとは言えないし、荷物だってほとんど入らない。快適さからは程遠いけれど、それこそがミニのエッジな部分だと思うんです。クルマってすべてがそろっていると便利な半面、どんどんつまらなくなってしまうような気がする。普通なら家族での一泊旅行くらい、特に意識をしなくても荷物は載るじゃないですか。ミニはトランクスペースがほとんどないので『パンツは何枚にしよう、上着は1枚で足りるか……』と真剣にパッキングするんです。まるで修業。その結果トランクに荷物がきちんと収まると、『Yes,we can.』となるわけです。まだしばらくはミニに乗って、不器用なエッジさを楽しみます」
現在は『悪魔の契約にサイン』(TBS系毎週水曜日19:56~)に出演中。
【Official Blog】http://ameblo.jp/nochyingmachin
text / TAKAHASHI Mitsuru photos / MANABE Kotaro