
本コーナー2度目の登場となる関口さん。理想の一台と運命の出会いを果たしたときのことを熱く語っていただきました
通称“ビッグ・ヒーリー”と呼ばれるオースティン・ヒーリー3000。関口さんには昨年3月にも本誌で愛車の取材を受けていただいたのだが、その時のクルマも3000だった。ただし前回がMk1だったのに対して、今回はMk3コンバーチブル。よく見ると三角窓の有無などわずかな違いがある。しかしよほどのマニアでもない限り、はっきりいってその差はわからないはず。なぜわざわざ買い替えたのだろうか。
「確かに作り手が分かってもらうことを放棄しているとしか思えないほどの差しかありませんからね。でも僕がどうしてもMk3を欲しかった理由はスタイリングなんですよ。もともとまったくクルマを知らなかったのに、たまたま街中でヒーリーを見かけて好きになったのがコンバーチブルだったんです。それが今から14年前。そこからクルマを探し始めたのですが、どうしてもコンバーチブルが見つからない。ようやく見つかったMk1を買ったのが7年前です。7年間探しても見つからなかったのだから、昨年取材を受けたころは、もうコンバーチブルとは出会えないだろうと諦めていたんですよ」
関口さんにとって癒しの時間はヒーリーに関するサイトの閲覧。番組の収録で中国を旅した最終日。北京のホテルでいつものようにヒーリーを検索していたら、見慣れないページを見つけた。そこには憧れ続けたコンバーチブルの写真があり、よく見ると日本の販売店だった。明日はもう日本へ帰国だというのに、今すぐ帰りたいという気持ちを抑えるのに苦労した。「帰国後すぐに問い合わせをしたらクルマはあると言うので、急いで見に行くことに。でもまだ安心できない。だって中古は中古ですからね(笑)。しかも海外では3000の人気が高まっていて、1000万円近くするものもあるんです。それじゃとてもじゃないが買えない。でも一生飽きることのないクルマだとわかっているから、ローンを組んででも買うべきか……。舞い上がっていると値段をふっかけられるかもしれないから、平静を装い『ちょっと興味があってね』くらいの態度で店に顔を出すことにしたんです(笑)」
憧れ続けたクルマとの対面。どれだけ程度が悪くても手に入れるしかないと思っていたのに、目の前のMk3はとてもきれいだった。下回りをのぞいてもサビなど見当たらない。なんと前は博物館に展示されていたものだという。胸の高鳴りを悟られないように価格を聞いてみたら……なんと全塗装込みでも500万円を余裕で下回るという!「このお店はヒーリーに無知なのか、はたまた仏様なのかと、めまいを覚えましたよ(笑)。もし店での僕の表情を映像に収めていたら、面白かったと思いますよ。後から『3000は日本では不人気なので、相応の価格』と言われました。でも世間の評判なんか関係ない。だって僕にとってはオンリーワンですから」
14年越しの夢がかない、生涯乗り続けられるクルマを手に入れた関口さん。今後の楽しみを聞いてみたら、自分が理想とするクルマを作るという壮大な夢を教えてくれた。
「僕にとってのオンリーワンのクルマをヒーリーさんという人が作ってくれた。だから今度は僕がいつか誰かにとってのオンリーワンのクルマをデザインしたいと思っているんです。どうも今の日本のクルマは、エコなのは素晴らしいのだけれど、創造性が一歩足りない。僕は創造性とは“潜んでいる美しさの法則を発見すること”だと思っています。ヒーリーさんが生み出したクルマを見るたびに、つくづく彼は創造性が豊かな人だったのだなと感じます。なので僕もそんな夢のあるエコカーを作りたい! もしヒーリーさんのクルマがオースティン社に採用されたみたいな出来事を僕が本当に起こしたら、伝説ですよねぇ(汗)」

text / TAKAHASHI Mitsuru photos / ABE Masaya